658条 寄託物の使用及び第三者による保管

条文

受寄者は、寄託者の承諾を得なければ、寄託物を使用することができない。
2 受寄者は、寄託者の承諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、寄託物を第三者に保管させることができない。
3 再受寄者は、寄託者に対して、その権限の範囲内において、受寄者と同一の権利を有し、義務を負う。

解説

改正趣旨

改正前は第三者に保管させることができるのは寄託者の承諾を得た場合に限られていた。改正後は2項で「やむを得ない事由」がある場合にも第三者に保管させることができることとした。委任契約においても「やむを得ない事由があるとき」に復委任が認められることとの整合性を図るものである。法律行為を委託するのが委任であり,物の保管という事実行為を委託するのが寄託ということができ(つまり寄託は準委任の一形態ともいえる)統一的な規律が望ましいことによる。
 改正前においては,再寄託ができるのは寄託者の承諾がある場合に限られていたので,受寄者の責任は再受寄者の選任及び監督に限定されていた。しかし,改正後は寄託者の承諾がない場合も再寄託が可能になったため,寄託者の責任を限定する条項は削除された。
 再寄託における再受寄者は,本来寄託者と直接の契約関係に立つわけではないので,寄託者と直接の権利義務関係を有するわけではない。しかし,3項により,権限の範囲内においては,受寄者と同様に寄託者との間での権利義務関係を有することになる。

「やむを得ない事由」

まず,保管場所の滅失等はそれにあたるといえる。倉庫の賃貸借契約の場合であれば,倉庫が滅失すれば賃貸借契約も終了する(616条の2)。しかし,寄託契約の場合,別の保管場所に保管しても契約の目的を達することができるので,契約は履行不能とは必ずしもいえない。しかし,現実問題として,常に代替倉庫が用意できるとは限らない。そのような場合,「やむを得ない事由」として第三者への再寄託が可能となる。
 では,保管費用の増加等の経済的要因は「やむを得ない事由」といえるか。少なくとも経常的に赤字の状況で保管することは,長期的に寄託契約が存続不可能になることから,寄託期間と経済的要因の程度によっては,「やむを得ない事由」になりうると解する。
 ただし,「やむを得ない事由」が訴訟で認められるかは不安定である。特に,「やむを得ない事由」が問題となるのは,寄託者の承諾を得ようとしてもできない場合,つまり承諾を拒否されたが「やむを得ない事由」として再寄託を強行する場合である。
そこで,契約書作成段階においては,できるだけ例示する等して「やむを得ない事由」が認められる場合を拡張することが望ましい。
 現実に再寄託の必要にせまられた場合に,出来る限り「やむを得ない事由」が認められるにするためには,寄託者との交渉経緯,再寄託先を選択した事情等,単に受託者にとって直接的に「やむを得ない事情」のみならず,寄託者との関係及び再寄託先の選択についても,「やむを得ない」と言いうる状況となるよう配慮して行動することが望ましい。

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